【現場レポートvol.04】TOKYO FORWARD 2025文化プロラム 『TRAIN TRAIN TRAIN』 手話通訳研修受講生の挑戦
2026/02/04
2025年12月6日、東京芸術劇場で、令和6年度 芸術文化分野の手話通訳研修受講生三名へインタビューした。この研修は東京都および公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京の主催で昨年度から始まった。美術館や劇場など芸術文化分野での情報保障を担う手話通訳者を養成することを目的に、手話通訳者として必要な基礎知識から、芸術文化分野での手話通訳の場面に沿った通訳技能まで、実践的な内容で構成されたプログラムである。
お話いただいたのは岩本華子さん、清水雅人さん、小原郁子さん。彼らは、TOKYO FORWARD 2025文化プロラムの1つとして東京芸術劇場で上演された舞台『TRAIN TRAIN TRAIN』で、稽古から本番まで制作現場に加わり、舞台芸術のアクセシビリティを支える役割を果たした。現場での実践を終えた今の気持ちと抱負をうかがった。

研修から現場へ—『TRAIN TRAIN TRAIN』チームの一員として
研修で美術館・博物館・劇場などで求められる通訳技能に加えて、文化事業の制作過程の知識も学んでいた三名は、障害の有無、性別や国籍を問わず多様な個性が集う東京芸術劇場のこの作品に、手話通訳者として参加した。
「最初は戸惑いもありました。舞台の専門用語や抽象的な表現をどう訳すか、悩みました」と岩本さん。清水さんは「舞台の現場は動きが速い。集中が一点に定まりすぎると、周りが見えなくなる。全体を広く見渡し、いろんなことを捉えながら通訳する難しさを感じました」と語る。舞台『TRAIN TRAIN TRAIN』は、音楽・身体・言葉が交錯する作品だ。稽古場ではダンスやバレエの専門用語、即興のやり取りに加え、照明や音響の変化など、言葉として表現されていない要素も多い。「どう訳せばいいか分からないときも、仲間に確認し補足してもらえる環境がありがたかった」と岩本さんは語る。
研修で得たスキルが稽古場でどう活きたか、具体的な話も聞くことができた。清水さんは、舞台進行のスピードに対応するために状況把握を心がけ、複数の指示が飛び交う場面でも冷静に対応できたと話す。お客様対応でも、お客様のご要望をくみ取り、字幕機器操作や会場の案内など、スタッフの一員として貢献することができたという。それぞれ最初は不安があったが、最後はチームの一員として並び立てたと感じたそうで、清水さんは「舞台の現場で、聞こえない人も聞こえる人も一緒に作品をつくる。その場にいられることがうれしかった」と語る。

文化をつなぐ通訳
三名は共通して、手話通訳は単なる言語変換だけではないと語る。「正確性はもちろんですが、言葉の背景にある思いを受け取り、その思いをのせて通訳することが大事だと思いました。文化の違いを理解し、相手にどう伝えるかが難しい。そこをつなぐのが通訳者の役割だと感じました」と振り返る。

そして、「当事者視点は絶対に重要だと思います。聞こえないから楽しめないだろう、見える形にすれば楽しめるだろうではなく、何を求めているかを聞くことが必要なんです」。と話す。
最後に、今後の抱負を聞いてみた。「日本語力をもっと高めたい。読み取りと表現の精度を上げたい」(岩本さん)、「広い視野で現場全体を見る力をつけたい」(清水さん)。「現場の状況に合った対応力を向上させる」(小原さん)と語った。三名のこれからの活躍に期待したい。
