【現場レポートVol.07】誰もが楽しめる新たな芸術体験を
2026/03/02

クラシック音楽と映像の融合
2025年11月8日、東京文化会館小ホールで、「Visual Harmony for All ~クラシック音楽とデジタルアートが織りなす、新たな芸術体験~」が開催されました。クラシック音楽の演奏にあわせて舞台上に映像をプロジェクションし、演奏の音と映像を鑑賞するといった実験的な公演です。
聞こえない方、聞こえにくい方、見えない方、見えにくい方にもコンサートを楽しんでいただくために、東京文化会館は様々な鑑賞サポートを用意し、お客様をお迎えしました。
音が形になる瞬間
映像演出・照明を担ったのはアブストラクトエンジンのチーム。オンスクリーンからフィジカルな空間まで様々な体験をデザインするクリエイティブチームが担当しました。ピアノや打楽器による演奏をデータ解析することによって、音楽の構造やテンポを映像で表現し、また音の大きさと映像が同期することで、音が形になっているかのような感覚をもたらします。
ファリャ『火祭りの踊り』では2台のピアノ演奏と映像の炎の粒子が渦を巻き、ラヴェル『水の戯れ』では波紋が広がり、幾何学の映像が『ボレロ』のリズムにあわせて舞台上に繰り広げられ、小ホールの空間全体が音楽と映像に包まれるコンサートとなりました。
誰にとっても心豊かな時間を過ごせるように
今回の公演は、東京文化会館が取り組んでいる「開かれた鑑賞体験」をお客様に届けるため、様々な鑑賞をサポートするツールを準備しました。
「タッチ・ザ・サウンド・ピクニック」は音を振動に変換する手持ち型の機器で、音が振動として伝わります。また、点字や拡大文字の曲目リストや、見えにくさのある方には「視覚支援機器レティッサオンハンド」を体験していただけるようにするなど、東京文化会館が誰にとっても心豊かな時間を過ごせる場所になることを目指しました。
「機器を使うと手が疲れる」という声に応えて、今回はクッションを貸し出す工夫も試みるなど、利用者の声を聞きながら試行錯誤を重ねています。

音を感じる体験
音楽と映像が融合するこのコンサートを、それぞれのお客様が楽しめたと感じられる声が寄せられました。
「抽象的なイメージを具体的につかみやすくなりました」「音が体感できたのは面白い経験でした」「音楽は分からないが、こういうものなのかなと思った」など、コンサートの新しい体験につなげていただくことができたようです。


(今回初の試みとして音楽を文字で表現しタブレットに掲載しました)




誰もがいつでも楽しめる場所へ
今回は聴覚に障害のある大学生の方々が東京文化会館に足を運んでくれました。そして、コンサートを楽しんでいただいた後に、お話をうかがいました。「音楽を聴くだけではなく、音楽というものの形やイメージが楽しめた」、「音楽は楽しめないと思っていたが、今回映像があったから楽しめた」といった声とともに、「自分は難聴なので音楽は何となく聞こえるが、今回の公演をろう者が楽しめるかどうかというと疑問。光や色の工夫が必要ではないか」、「クラシック音楽だと静かにしなければならないという意識があり、ろう者・難聴者にはハードルが高い。もっと、みんなで楽しむワークがあると良いと思った」「キューブが出てくるだけの映像は分かりにくかった。高音、低音で映像がよりはっきりとわかるのがよいと思う」などの今後に向けての指摘をいただきました。このコンサートを通していただいたお客さまからの感想やご指摘にひとつひとつ向き合いながら、誰もが芸術文化を楽しむための東京文化会館の挑戦はまだまだ続きます。

東京文化会館 YouTubeチャンネル
[TOKYOスマート・カルチャー・プロジェクトVisual Harmony for All ~クラシック音楽とデジタルアートが織りなす、新たな芸術体験~ 2025年11月8日公演 アーカイブ動画]
“音楽×映像”の共感覚な鑑賞体験:東京文化会館
「Visual Harmony for All 〜クラシック音楽とデジタルアートが織りなす、新たな芸術体験〜」レポート
[AXIS Web (デザインの視点で、人間の可能性や創造性を伝えるメディア) – 掲載レポート]